兎ノ森とツクラレシ花 Usagino-Mori’s Diary

小企業勤めの小市民のちみっちいココロとノウで書いてみます(仮)

事実と謙虚に向き合えない毎日新聞の耐えられない酷さ②

前回の続き。

朝日「慰安婦報道・点検」をめぐって:吉田清治証言 国際社会に誤解広める 国連報告などが引用、朝日は影響に触れず - 毎日新聞

 

記事の酷さはこれからますます加速していきます。

 だが、吉田証言はその後も生き続ける。

 96年1月に出た国連人権委員会報告書(クマラスワミ報告)は、旧日本軍の慰安婦制度を「軍性奴隷制」(military sexual slavery)と定義し、日本政府に国家賠償や謝罪、加害者の処罰などを勧告した。報告書は吉田氏の著書を引用し、「強制連行を行った吉田清治は戦時中の体験を書いた中で(中略)1000人もの女性を『慰安婦』として連行した奴隷狩りに加わっていたことを告白している」と記した。クマラスワミ報告について、慰安婦問題に長く関わってきた大沼保昭明治大教授は「不正確な引用を含み、総体的にみて学問的水準の低い報告」と指摘している。

 報告書で慰安婦制度を解説した部分は、オーストラリア人ジャーナリスト、ジョージ・ヒックス氏の著書「性の奴隷 従軍慰安婦」(95年、邦訳も同年、三一書房刊)によったが、同書も吉田氏の著書を根拠に「(慰安婦募集の)他の方法が失敗した場合は、かならず奴隷狩りが行われた」などとした内容だ。

毎日新聞はクマラスワミ報告について何か誤解をしていないだろうか。

そもそもこの報告書はクマラスワミ氏の

クマラスワミ氏は1995年に提出した予備報告書で、「慰安婦」問題について「第二次大戦後約50年が経過した。しかしこの問題は過去の問題ではなく、今日の問題とみなされるべきである。それは武力紛争時の組織的強姦及び性的奴隷制を犯したものの訴追のために、国際レベルで法的先例を確立するであろう決定的な問題である。象徴的行為としての賠償は、武力紛争時に犯された暴力の被害女性のために補償による救済への途を開くであろう」と書いた。明らかに旧ユーゴと戦時の日本における二つの問題の関連を強く意識し、人権を基礎とする平和秩序をいかにつくりあげてゆくかという今日的観点からその解決を探ろうとする意欲を示したのであった。

という目的で出されたものだ。ではなぜ報告されたのか。

人権委員会が女性にたいする暴力の問題を取り上げた直接の背景としては、冷戦構造のもとでのさまざまな人権抑圧が表面化したことと、開発が急速に進行した発展途上国(地域)において直接的な、あるいは社会的な女性にたいする人権侵害が頻発し、明かるみに出されたこと、昨年の国連世界女性会議に結集したような女性の抑圧からの解放と地位向上を求める運動が世界的に高まったこと等をあげることができる。しかしとくに重要であったのは、旧ユーゴスラヴィアにおける内戦の過程で行われた「民族浄化」を名目とする女性にたいする強姦や強制妊娠などと、第二次世界大戦中に日本軍により組織的に行われた「従軍慰安婦」にたいする被害回復の問題が急速に表面化したことであった。

クマラスワミ報告

この背景や「従軍慰安婦に対する被害回復」が問題であったからであろう。だからこそ証言に一章をさくことになり、被害者の心の真実にたどり着くための方法論であったのかもしれない。だから、クマラスワミ報告のあり方が法華狼さんの意見のような形になったのであろう思う。「従軍慰安婦に対する被害回復」が目的であったから「少しでも被害者を取りこぼさないよう」のがクマラスワミ氏がこういった方法論を選んだ理由だったかもしれない。

 吉田証言を少数意見としても肯定的に言及し、当時から削除するべきと批判されていたわけだが、逆に削除したとしても報告書の全体像が崩れるほど重視されているわけではない。この報告書は吉田証言にかぎらず、信頼性の低い証拠や研究にも言及しつつ、全面的な依拠はしないように注意がはらわれている。少しでも被害者をとりこぼさないよう不確かな資料でも言及しておく。これはこれでひとつの方法論ではあるだろう。

 

 クマラスワミ報告書と吉田清治証言と性奴隷認定の関係をめぐるデマ - 法華狼の日記

毎日新聞では言及されていないが、クマラスワミ氏は秦郁彦氏の主張も併記している。

東京の歴史家、千葉大学秦郁彦博士が「慰安婦」問題にかんする幾つかの研究、とくに済州島での「慰安婦」の状況について書いた吉田清治の著書に反論したことを指摘しておく。博士の説明では、彼は1991~92年に大韓民国済州島を史料収集のため訪れたが、「慰安婦犯罪」の主犯は実際には朝鮮人区長、売春宿の持ち主及び少女自身の親たちでさえあった。教授の主張では親たちは娘の徴集の目的を知っていたというのである。議論の裏付けとして秦博士は、1937年から1945年にかけての慰安宿のための朝鮮人女性徴集システムの二つのひな型を示した。どちらのモデルも朝鮮人の親たち、朝鮮人村長および朝鮮人ブローカーたち、すなわち民間人たちが日本軍のために性奴隷として働く女性たちの徴集に協力し、役割を果たしたことを知っていたことを明らかにしている。秦博士はまた大部分の「慰安婦」は日本陸軍と契約を結んでおり、月あたり兵隊の平均(15~20円)の110倍(1000~2000円)もの収入を得ていたと信じている。

ここには「慰安婦高級論」説も紹介しておりけっして毎日新聞のように一方的ではない。クマラスワミ報告もマクドゥーガル報告もあくまでこの流れにおいて報告されていることを忘れてはいけない。「吉田証言」に憑りつかれているのはこう考えると毎日新聞であろう。

この「クマラスワミ報告」についても「米下院外交委員会に慰安婦問題について日本政府に謝罪を求める決議案」についても何故それがだされたのかは一切語らず、「この決議案の議員説明用の資料にも途中段階で吉田氏の著書が出てくる。」と持ち出す。「吉田証言」ここにもあったゲームでもしているのであろうか。

そもそもなぜそのような決議にいたったのかといえば、安倍首相の河野談話を否定するような発言が「日本政府のこの問題に対する不誠実であるということ」のきっかけで「THE FACT」の意見広告がとどめを刺したのではないか。何故それに触れない。

この辺の適当さは異常である。

さらにグレンデールの問題。

 一方、米国内では韓国系団体などの働きかけによる慰安婦碑の設置が相次いでいる。その碑文は「日本帝国の軍により拉致された20万人以上の女性と少女のために」(ニュージャージー州パリセイズパーク市)「20万人以上のアジア人とオランダ人の女性たちが、大日本帝国軍によって強制的に性奴隷にされた」(カリフォルニア州グレンデール市)などと韓国側の主張をベースにしている。「強制連行」認識はなお生き続けている。

ここでも「韓国系団体など」といいう形で「強制連行認識は韓国側の主張をのんだ」ということを書き捨てている。しかし少なくともグレンデール市においては日系団体も協力しているものだし、強制連行について書かれているないに「強制連行」認識はなお生き続けていると結論付ける。

グレンデールの慰安婦碑設置には日系団体も協力しているんですけどね - 誰かの妄想・はてな版

もういいかげんにしろ!毎日新聞!!

書いてて腹立ってきた。

大体、朝日の吉田記事の罪深さは「吉田証言的強制連行」が「慰安婦の強制連行のイメージ」であるという流布につながった(他のメディアによって)、「結果の罪深さ」にある。

それは勝手にイメージを作り上げた「否定論者」や「乗っかったメディア」の本来の責任であり、「慰安婦問題」を真剣に取り上げずあくまで「日韓関係問題」としてとらえた責任であろう。池上彰氏に共通する安易さを見ずにはいられない。

この記事など語るに落ちるだろう。

 ◇事実と謙虚に向き合う

 毎日新聞は常に事実に謙虚であることを肝に銘じ報道にあたってきました。朝日新聞の一連の報道で、「吉田証言」のような軍の組織的強制連行があったとの誤解が世界に拡散したとされるように、報道は社会に大きな影響を与え、外交にも不幸な事態を招きかねません。誤った報道は速やかに訂正し、納得のできる説明をするという報道機関の責務を痛感します。

 今回、毎日新聞慰安婦問題をめぐる朝日報道の内容とその影響について特集しました。毎日新聞の報道についても報告しています。

 一方で、この問題をめぐる混乱が、日韓両国の未来構築をも阻む一因になると懸念します。女性の人権を守るため議論を重ねている国際世論の理解を得られなくなることも心配です。毎日新聞は事実に謙虚に、そして未来につなぐ報道を続ける決意です。【編集編成局長・小川一

吉田証言的強制連行の亡霊にとりつかれ、慰安婦問題についてなにも進んでこなかった少なくとも97年以降、従軍慰安婦のについての研究は進んでおり当時の認識でこの問題を語るから混乱が起こるのである。日本政府とその社会は結局「慰安婦問題」ということにまじめに取り組まなかったのである。

言っておくが吉田記事が国際世論に与える影響より、「慰安婦問題」について日本がどういう対応をとってきたかそれを世界はみているのであり、現在の結論はそれにたいしいてあながち間違っていないことをこの記事をすっとぼけた決意は物語っている。