兎ノ森とツクラレシ花 Usagino-Mori’s Diary

小企業勤めの小市民のちみっちいココロとノウで書いてみます(仮)

事実と謙虚に向き合えない毎日新聞の耐えられない酷さ①

ひさびさにあまりにひどい記事だったので、毎日新聞の記事を検証してみた。

 朝日「慰安婦報道・点検」をめぐって:吉田清治証言 国際社会に誤解広める 国連報告などが引用、朝日は影響に触れず - 毎日新聞

  まず、この記事は「河野談話検証報告書」を引用しているが、あるところでは「河野談話検証報告書」を無視しているのに、急に「河野談話検証報告書」を引用してくる。

河野談話検証報告書」には前も書いた通り、

1991年8月14日に韓国で元慰安婦が最初に名乗り出た後、同年12月6日には韓国の元慰安婦3人が東京地裁に提訴した。1992年1月に宮沢総理の訪韓が予定される中、韓国における慰安婦問題への関心および対日批判の高まりを受け、日韓外交当局は同問題が総理訪韓の際に懸案化することを懸念していた。

とある。この文章を読めば「韓国の元慰安婦3人による東京地裁提訴」が「韓国における慰安婦問題への関心及び対日批判の高まりをうけた」ことで「宮沢総理の初訪韓」する上での日韓の外交課題(総理訪韓の際の懸念化)に急浮上するきっかけになったと読むのが普通だ。

しかし毎日新聞のこの記事は

  慰安婦問題が日韓の外交課題に急浮上するきっかけになったのは、92年1月11日に朝日が報じた「慰安所 軍関与示す資料」という記事だった。

 としている。

つまりここでは「河野談話検証報告書」を無視した形で記事を書いている。

しかし

 安倍晋三内閣が今年6月に公表した河野洋平官房長官談話(河野談話)検証報告書にも「朝日新聞が報道したことを契機に韓国国内における対日批判が過熱した」という記述がある。

 と急に「河野談話検証報告書」の引用を始める。これは卑怯ではないか。

そもそも「韓国の元慰安婦3人による東京地裁提訴」があって、「韓国における慰安婦問題への関心及び対日批判の高まりをうけた」ために、と「宮沢総理の訪韓予定」が問題ないようにするために、調査を行い「慰安婦問題において日本国家が関与していたかどうか」の調査の結果、日本国家が関与していたことがわかり、「韓国国内における対日批判が過熱した」というのが当然の読み取りだろう。

それと

朝日新聞が報道したことを契機に韓国国内における対日批判が過熱した」のは

政府は当時、「民間業者が連れ歩いていた」として国の関与を認めていなかったため、それを覆す文書とされた。

からであろう。

そりゃ対日批判が過熱してもおかしくはない。だって国家は関係してないからと言ってて関与している証拠が出たわけだから。

だからこそ「河野談話検証報告書」では

1992年1月16日~18日の宮沢総理訪韓時の首脳会談では、盧泰愚大統領から「加藤官房長官が旧日本軍の関与を認め、謝罪と反省の意を表明いただいたことを評価。今後、真相究明の努力と、日本のしかるべき措置を期待」するとの発言があり、宮沢総理から、「従軍慰安婦の募集や慰安所の経営等に旧日本軍が関与していた動かしがたい事実を知るに至った。日本政府としては公にこれを認め、心から謝罪する立場を決定」、「従軍慰安婦として筆舌に尽くし難い辛苦をなめられた方々に対し、衷心よりおわびと反省の気持ちを表明したい」、「昨年末より政府関係省庁において調査してきたが、今後とも引き続き資料発掘、事実究明を誠心誠意行っていきたい」との意向を述べた。

と続くのだ。

この直後に訪韓した宮沢喜一首相は、盧泰愚(ノテウ)大統領に繰り返し謝罪せざるを得なかった。

のはそういうわけである。しかも朝日新聞の記事を加藤官房長官や宮沢首相が読んだからではなく、そういう資料が見つかって当然政府も確認したであろうから、「従軍慰安婦の募集や慰安所の経営等に旧日本軍が関与していた動かしがたい事実を知るに至った」のは当然と思う。毎日新聞は日本政府は新聞で外交を判断するとか何を言っているのだろうか。

今回の毎日新聞の記事、こんなんばっかりである。

記事においてこういった構成をすれば、毎日新聞の言う「誤解を招く」ことになるだろうということは、以下の朝日新聞の紙面の構成を批判する毎日新聞がわからないはずはないではないか。

ただし、朝日は日本国内での慰安婦募集についての通達文書であるにもかかわらず、専ら朝鮮人慰安婦を対象にした文書のように紙面を構成した。さらに「従軍慰安婦」の説明として「太平洋戦争に入ると、主として朝鮮人女性を挺身(ていしん)隊の名で強制連行した。その人数は8万とも20万ともいわれる」と記述したため、慰安婦が「挺身隊」の名で強制的に連行されたとの印象を強く与えた。吉田証言は、このストーリーを具体的に裏付けるものと位置づけられた。

 (偽)兎はこの記事を見ていないので何とも言えないが、少なくとも発見者の吉見教授については毎日新聞だって取材することはできたはずだ。「専ら朝鮮人慰安婦を対象にした文書のように紙面を構成した」というなら吉見教授が内地についての通達としているのに対し疑問を持ってしかるべきだろう。取材しなかったのか。

また

吉田証言は、このストーリーを具体的に裏付けるものと位置づけられた。

これは逆だ。「元慰安婦による提訴」と「慰安所、軍関与示す資料」はここで「吉田証言」を裏付けるというストーリーとして結び付けられる。

「軍が関与した、慰安婦というのは存在した、つまり吉田証言は本当だ」ということであって、本来そうしたことは「吉田証言のメディアの再発見」として語られるべきであり、批判されるべき問題である。しかし敢えて毎日新聞は本質を見落としているのか、故意に無視している。

また、

国内世論の沸騰を受けて韓国政府は92年7月31日、「日帝下の軍隊慰安婦の実態調査中間報告書」を公表した。同報告書には「1943年ころから(中略)19世紀のアフリカでの黒人奴隷狩りのような手法の人狩りで慰安婦を充員することになった。吉田清治氏はその著書の第2章でそうした状況について証言している」との記述がある。吉田証言が真実であることを前提にしたものだった。

これも記事の構成というより、時系列どおりにしないで敢えて誘導しているといわれても仕方がない。

まず92年4月30日の産経新聞および「正論」6月号(5月1日)で「吉田証言に疑義が提起された」が「吉田証言が否定されたわけではないから

一方で、現代史家の秦郁彦氏は、吉田氏が「慰安婦狩り」の現場と称する韓国・済州島での実地調査に基づき、92年4月30日の産経新聞および「正論」6月号(5月1日発売)で証言に疑義を提起した。しかし、ただちに吉田証言が否定されたわけではない。

韓国政府は7月の報告書に吉田証言を真実として前提とした。

しかもこの記事は

1943年ころから(中略)19世紀のアフリカでの黒人奴隷狩りのような手法の人狩りで慰安婦を充員することになった。吉田清治氏はその著書の第2章でそうした状況について証言している」との記述がある。

これは(中略)の部分には「慰安婦動員に上のような方法(詐術あるいは威圧的雰囲気による方法)が通らなくなると」という記述を省略している。

韓国政府による「日帝下軍隊慰安婦実態調査 中間報告書」(1992年7月)における慰安婦募集に関する記述 - 誰かの妄想・はてな版

 これはどういう意図があってそんな略し方をしたのであろうか。

当然この略し方は

 報告書について韓国紙は「婦女子狩り」(朝鮮日報)「ドレイ狩り」(東亜日報)など、大見出しで吉田証言を強調した報道をしている。韓国国民は政府公認の解釈として慰安婦=強制連行を常識とするに至る。

こういう結論を導き出すために行われたとしか読みようがない。資料のトリミングによって誤解を生みだす原因になるではないだろうか。記事によるこういった行為はまだまだ続きます。(続く)